糖尿病性腎症 | 糖尿病の合併症
糖尿病性腎症の症状、体験談、予防法を解説しています。
糖尿病の恐ろしい合併症のひとつに、腎症があります。原因はまだはっきりとわかっていませんが、糖尿病が全身の動脈硬化を促進させることで、腎臓の毛細血管にも悪影響が及び、老廃物をろ過することができなくなると考えられています。
初期段階にはほとんど症状が現れず、身体のむくみや息切れ、手足のしびれや食欲不振などを自覚するようになる頃には、かなり症状が進行してしまっています。
こうなると人工透析を選択せざるを得なくなりますが、その費用は高額で、公的な助成制度を利用しても1ヶ月10,000円以上かかるケースが多くなっています。週に何度も病院に通わなくてはいけなくなりますし、時間的にも負担が大きくなります。
糖尿病性腎症の占める割合
慢性透析患者数の推移
引用元:糖尿病ネットワーク(http://www.dm-net.co.jp/calendar/2017/026532.php)
2015年12月の調査では、国内で透析療法を受けている患者の数は32万人以上という結果が出ました。中でも糖尿病腎症から透析療法を受けることになった患者の割合は非常に高く、全体の43.7%。透析開始原因の第1位となっています(※注1)。
なお、透析療法導入時の平均年齢は67.3歳となっており、高齢者は糖尿病性腎症になりやすいということがわかります。高齢者で糖尿病患者、もしくはその危険因子を抱えている人は、特に注意が必要といえそうです。
注1:『図説 わが国の慢性透析療法の現況』
人工透析が必要となった糖尿病患者の体験談
- 30代で糖尿病になり、インスリン注射を続けていました。その後医師から「腎臓の専門医を受診して下さい」といわれました。診療の結果、腎症が発症しており、透析をしなければならないことがわかりました。むくみなどの自覚症状もあり、具合が悪かったのを覚えています。
- 私は現在、腹膜透析を行っています。血液透析は数時間の時間がかかり、その間じっとしていなくてはならないので、私の性格にはとても合いません。今は体調も良く、仕事もできています。
糖尿病性腎症の予防法とは
2型糖尿病は自覚症状に乏しいため、発覚した時にはかなり症状が進んでいるケースが多くなっています。糖尿病性腎症の発見も遅れがちなため、現在は自治体レベルで検査法の見直しが実施されているほどです。
いったん糖尿病を発症してしまうと、患者の腎臓には悪影響が及んでしまいます。大切なのは、重症化を予防すること。適切な食生活や運動の習慣づけ、そして最新の検査法を導入している医療機関を、定期的に受診することです。
糖尿病腎症の検査方法と治療方法を解説
このように、糖尿病腎症は自覚症状がないまま徐々に進行していくことの多い疾患です。体にむくみが出るなどの症状が出た時には、すでに腎症がかなり進行している状態である可能性が高いです。そのため自覚症状が出ない頃から検査を行い、早期発見することが大切になります。ここでは、糖尿病腎症を早期発見するための検査方法や治療法について紹介します。
糖尿病腎症の検査方法
糖尿病腎症を早期発見するために、微量アルブミン尿検査を実施します。「アルブミン」とは加熱によって固まるたんぱく質のことで、通常は尿から検出されることはありません。しかし腎機能が低下するとろ過機能がうまく働かなくなり、尿中からでもアルブミンが検出されるようになります。糖尿病腎症の場合、尿中から検出されるアルブミンはごくわずかのため、少量のアルブミンでも検出可能な尿中微量アルブミン検査が実施されるのです。
糖尿病腎症の治療方法を進行度別に紹介
糖尿病腎症の進行度は大きく5つにわかれており、それぞれ治療法が異なります。
第1期:主に生活習慣病の見直し
自覚症状が出ない腎症前期の頃は、血糖コントロールや食事療法、高血圧の治療などを行います。生活習慣の見直しが主で、特別な治療はあまり行われません。
第2期:血糖コントロールや血圧の管理など
自覚症状はないものの、血圧が上昇してくる時期です。第1期よりさらに厳格な血糖コントロールのほか、血圧の管理や血清脂質の管理などが行われます。必要に応じて降圧薬や脂質低下薬を服用することもあります。
第3期:必要に応じて利尿薬を服用
タンパク尿に陽性反応が出る時期で、腎機能が急速に低下してきます。2期の治療に加え、むくみが出てきた人には必要に応じて利尿薬を服用します。
第4期:食事療法やインスリン製剤の投与
第3期までの治療がうまくいかないと、腎不全の症状が出始めます。腎臓のろ過機能が正常に行われず、老廃物が血中にたまって細胞のはたらきが悪化。下記のような症状があらわれ始めます。
- 尿毒症による貧血や倦怠感
- 尿毒症性神経痛による手足の痛みやかゆみ
- ネフローゼ症候群による慢性的なむくみ
3期までの治療に加え、腎症治療に重点を置いた食事療法やインスリン製剤の投与が行われます。
第5期:透析療法や腎臓移植
4期の治療も功を奏さなかった場合は、透析療法や腎臓移植が必要です。透析療法には血液透析と腹膜透析の2種類があり、前者は週3回のペースで通院し、1回につき4~5時間かけて血液の浄化を行います。一方、腹膜透析は腹部にある腹膜の機能を利用して血液をろ過する方法で、専用の管から透析液を注入・排出することで血液の浄化を行います。
この方法だと時間や場所を問わず透析を行えますが、患者さん自身の管理が悪いと腹膜炎を起こしやすくなるので注意が必要です。これら透析とあわせて、食事療法や血糖コントロールなどを継続して行います。