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糖尿病の予防になる有酸素運動

監修医師情報

上野内科・糖尿病内科クリニック

院長 上野尚彦医師

有酸素運動による糖尿病予防

糖尿病を心配するくらいなので、運動不足な人が多いと思います。運動不足ゆえに肥満も進み、糖尿病になってしまうという悪循環に陥るのです。運動することで血糖は有効に活用され、身体のインスリン感受性も高まります。

いきなりきつい運動は厳しいという人には、ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめ。呼吸し酸素を取り入れながら歩くことで、血糖が効率よく使われます。負荷が少ないわりに長時間続けられますので、糖尿病を予防したい人に非常におすすめです。

有酸素運動はどのぐらい行うと良い?

有酸素運動の中でも、身体的負担が最も少ないのはウォーキングなので、手始めには最適といえるでしょう。実施する時間帯によって血糖値の低下に差が出ます。最もおすすめなのは食後30分~2時間の間で、血糖値の上昇を効果的に抑制できます。

ウォーキングをするときは、20~30分の時間をかけて行うこと。10分程度で血糖値の降下作用が出始めますが、脂肪燃焼効果を高め、身体のインスリン感受性を高めるには2~3倍の時間が必要です。

毎日行うのが理想的ですが、難しい場合は「週3日以上」を目安に、継続を心がけて下さい。

有酸素運動にはどんな種類があるのか

ウォーキングに慣れたら、別の運動にも挑戦してみましょう。ウォーキングよりも負荷をかけることで、糖尿病予防効果が期待できます。

では、ウォーキング以外の有酸素運動には、どのようなものがあるのでしょうか。

  • ジョギング
  • サイクリング
  • 水泳
  • エアロビクス

いずれも一定の時間をかけ、酸素を取り入れながら身体を動かすことが特徴です。

水泳やエアロビクスは、自宅で行うのが難しい運動ですので、時間に余裕がある人は近隣のジムを利用すると良いかもしれません。また、自治体が運営する体育館は利用料も安価なので、情報を調べてみることをお薦めします。都心に住んでいる人は、環境的にジョギングやサイクリングの実践が難しいかもしれませんが、ジムなどの施設には同様の効果が得られるマシンも設置されています。

レジスタンス運動との組み合わせも検討を

ダンベルやマシンを利用したり、自分の体重を使って筋肉に負荷をかける筋力トレーニングは「レジスタンス運動」と呼ばれます。

このレジスタンス運動は、有酸素運動と同じく糖尿病の予防に役立ちます。瞬間的に強い力が必要とされるレジスタンス運動でも、糖質が消費されるからです。有酸素運動で徐々に運動になれたら、ぜひ自宅やジムでのレジスタンス運動も実践してみましょう。

米国の研究機関が行った2年間にわたる調査では、有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせた人のHbA1c(ヘモグロビンA1c)平均値に、有意な低下が見られたそうです。同時にいずれかの運動だけを行った人には、「期待していたほどの低下が見られなかった」という結果も出ています(※注1)。

もしあなたが、「どうしても運動が続かない」「運動はしたくない」という場合は、ホルモン分泌に注目をするのもよいでしょう。近年は、インスリン分泌を促進するホルモンの存在が話題になっています。当サイトにも情報をリサーチしたページを設けていますので、ぜひご一読ください。

有酸素運動とレジスタンス運動の効果の違い

有酸素運動とレジスタンス運動は、その運動に期待される効果に違いがあります。

有酸素運動で、適度な心拍数での運動によって循環機能や呼吸機能の維持や向上効果があります。また、筋肉が血中の糖質だけでなく脂質もエネルギー源として消費し、酸素の取り込みが増大します。その為、インスリン抵抗性が改善され糖代謝が正常化されます。また、定期的な有酸素運動を継続することで、インスリンの作用を高めインスリン感受性の改善、脂質代謝機能の改善効果があります。

一方で、レジスタンス運動は有酸素運動と同様に、インスリン抵抗性の改善、インスリン感受性の改善効果を得られることがわかっています。また、筋力や筋量が増加することで基礎代謝がアップし、日常生活でのエネルギー消費量を増やすことができます。運動の負荷によっては血圧が上がることがあるため、高血圧がある場合などは注意が必要です。

メタボリックシンドロームや糖尿病患者の場合、運動習慣がないことで筋力が健康人の一般平均よりも少ない傾向がみられます。その為、有酸素運動を導入しても運動効果を得られにくく、有酸素運動とレジスタンス運動の併用の必要性が指摘されています。どちらか一方だけの運動ではなく、レジスタンス運動と有酸素運動を組み合わせることが効果的な運動療法になります。(※注1)

運動以外の身体活動:NEATとは

NEATは、姿勢の保持や家事、通勤などの移動、仕事や余暇活動といった低~中等度の運動強度の様々な生活活動です。

1日あたりのエネルギー消費量の内訳には、基礎代謝量、食事誘発性体熱産生、運動、運動以外の身体活動があります。1日30分以上の運動を週2回行っている人であっても、この消費量の内の運動が占める割合は3~5%と考えられています。一方で、25~30%を占めているのが運動以外の身体活動 NEAT (Non-exercise activity thermogenesis) と言われています。

NEATの増加で糖尿病を予防する

近年、運動不足だけでなくこのNEATの低下が指摘され、その研究が進められています。その中で、これまで言われてきた運動療法だけでなく、1日の総運動時間が同じであれば細切れの短時間運動であっても血糖降下作用が得られることがわかっています。また、断片的な生活活動でも血糖コントロールの改善に効果があると示唆される研究結果も出てきています。(※注2)

つまり、1日の中で座っている時間を減らして立つ機会を増やす、階段の上り下りを積極的にする、短距離でも歩く機会を増やす、家事や買い物で積極的に活動するといった生活活動量の増加は、血糖コントロールの改善に効果的だということです。運動療法に取り組むだけでなく、まずはこのNEATの増加を意識してみましょう。

運動療法を始めるときは自分に合った方法で

運動療法を始める際、自分に合った方法で始めることが大切です。これまで運動習慣が全くなかった人や肥満傾向の人が、いきなり負荷の高い運動を始めることは、関節や身体を痛めるリスクがあります。また、心肺機能に関わる症状がある場合や、まだ気づいていないがリスクがある場合も、いきなりの運動は危険です。実際に、こういったケースはとても多くあり、せっかくの運動療法の目的が果たされず、むしろ新たなリスクを抱える結果になっています。

肥満やメタボリックシンドロームがある場合、まずは自分の身体の状態を知り、自分に合った方法とペースで運動を始めることが大切です。運動療法の真の目的である、糖尿病予防や改善、メタボリックシンドロームの改善が得られるよう、かかりつけの医師や専門医への相談や、理学療法士に相談しながら運動療法を行いましょう。

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