糖尿病の予防が期待できる食べ物
監修医師情報
上野内科・糖尿病内科クリニック
院長 上野尚彦医師
糖尿病予防に役立つ食べ物
野菜
糖尿病予防に役立つ食べ物の代表格は、やはり野菜です。野菜に含まれる多量の食物繊維には、栄養吸収のスピードを緩やかにする作用があるため、血糖値の急激な上昇を抑制してくれます。また満腹感も高めやすいため、過食を防ぎ、インスリンの過剰な分泌を抑制してくれます。
糖尿病予防の食事では、過食や偏食を避け、さまざまな食品をバランスよく食べることを第一に考えるのが大事です。糖質・たんぱく質・脂質に加えて十分な量の野菜を摂ることも、血糖値対策では重要です。
ただ、じゃがいもやさつまいも、里芋といったイモ類や根菜類には糖質が豊富に含まれているため、糖尿病予防を考えた食生活を送るなら、食べ過ぎには注意しましょう。
緑黄色野菜が大事
糖質量の少ない野菜を選ぶ場合は、キャベツやほうれん草、ピーマンといった緑黄色野菜を選びましょう。血糖値は吸収の早い糖質(砂糖など)を摂取することで急激に上昇してしまうため、糖質の少ない緑黄色野菜ならたくさん食べても血糖値の上昇は気になりません。緑黄色野菜はビタミンや食物繊維といった栄養素を含んでおり、バランスの取れた食生活には不可欠です。
ただし、緑黄色野菜を食べる場合はドレッシング選びに注意。市販のドレッシングは、おいしさを追求するために脂質や糖質がたくさん使われているものも少なくありません。できるだけ、ビネガーやオリーブオイルといった健康的な調味料を選び、カロリーの過剰摂取を避けるのがポイントです。野菜以外にも海藻やこんにゃくなどは食物繊維が豊富なので、ぜひ積極的に摂取して下さい。
ヨーグルト
ヨーグルトを食べると糖尿病リスクが下がる?

健康に役立つ食品として認知度の高いヨーグルトですが、腸内環境の改善以外にもさまざまな働きがあることがわかっています。特に注目したいのが、「糖尿病のリスク低減」です。
英国で男女3,500人を対象にした実験では、普通に生活をしていた人たちに比べて、ヨーグルトや低脂肪フレッシュチーズ、カッテージチーズといった乳製品を食べていた人たちは、糖尿病の発症率が24%低いという結果がでました(※注1)。
ヨーグルトに含まれるビタミンKには、腸内環境の改善のほかに骨の健康維持や形成、血管の健康にも役立つことが知られています。つまり、ヨーグルトは糖尿病リスクを下げるだけでなく、健康の維持や向上にも役立つ食品といえるのです。
ただ気をつけたいのは、糖尿病のリスク低下に関連性があるのは、乳製品の中でも低脂肪製品に限られていることです。牛乳や高脂肪チーズといった食品では、効果が見られなかったということなのでご注意ください。
ヨーグルトは血糖値も下げる?
チーズやヨーグルトといった乳製品を作るときにできる副産物を「ホエイ(乳清)」といいます。これは、ヨーグルトを動かさずに置いておくと上に溜まる液体のことです。このホエイは乳脂肪や乳タンパク質が取り除かれたもので、水溶性のタンパク質やビタミン、ミネラル分などの栄養素が豊富に含まれています。
食事をすると、通常は摂取した糖質がブドウ糖として吸収されますが、炭水化物を摂る前にホエイを摂ることで、血糖値を上げてしまうホルモンの分泌が抑制される効果があります。同時に、食欲を抑える効果もあるため、食べ過ぎを防いで肥満の抑止にもつながります。
ただし、ヨーグルトなどの乳製品の中でも低脂肪製品に限られており、糖分が加えられたものは効果が期待できなくなるということ。糖分の摂取を制限する際には、低脂肪や無加糖のヨーグルトを選ぶようにすると良いでしょう。
ヨーグルトが糖尿病の慢性炎症も抑制する
肥満が続くと、脂肪組織が慢性的な炎症を起こします。この状態が慢性炎症です。慢性炎症は2型糖尿病だけでなく、高血圧や動脈硬化といった重い病気も引き起こす可能性があります。
ヨーグルト内の乳酸菌やビフィズス菌が腸内環境を整えてくれるので、慢性炎症を抑制できるのです。腸内の環境が乱れると、ウィルスや細菌や有害物質などから腸壁を守っているバリア機能が低下してしまいます。それによって様々な病気が引き起こされるのです。
体の内側から調子を整えてくれるヨーグルトは、糖尿病予防の大きな助けとなってくれる心強い味方なのです。
魚
魚には「EPA」と「DHA」という脂肪酸が含まれています。EPAとDHAは魚に含まれる良質な脂であり、糖尿病予防の食べ物として期待されている成分のひとつです。
2013年にシンガポールの医学誌で発表された論文では、「2型糖尿病患者に3ヶ月EPAを摂取させたところ、高血糖状態が改善された」という結果も出ています。(※注2)
そのほか、EPA・DHAの摂取はコレステロール値や中性脂肪といった血管の健康維持も助けてくれるのです。魚には、100gあたりおおよそ20gのたんぱく質も含まれているため、糖質・たんぱく質・脂質をバランスよく摂取するためにも、積極的に魚を食べることをおすすめします。
きのこ・海藻類
腸内細菌は食物繊維をエサにするため、腸内環境の改善という意味では、食物繊維は必要不可欠。例えば、ヨーグルトなどを食べて腸内の善玉菌を増やしたとしても、十分なエサがなければ腸内環境は変わりません。
その点、しめじやわかめといったきのこ類・海藻類には食物繊維のほか、人が生きていく上で必須の栄養素であるミネラルも豊富に含有されています。きのこや海藻は料理にも加えやすいので、必要な栄養を摂取するためにも糖尿病予防の食べ物として積極的に摂りましょう。
カロリーに目配りを
糖尿病予防食と聞くと「糖質制限」を思い浮かべる人がいるかもしれません。しかし、糖質を抑えたからといって、何でも制限なく食べられるというわけではなく、高カロリーのものはもちろんNGです。
カロリーの高いものは、糖尿病の原因となる肥満を招きやすいからです。特にファストフードやジャンクフードなどは、なるべく控えるようにして下さい。カロリー制限によって血圧や脂質が低下すると、インスリン抵抗性(=インスリンが効果を発揮しにくくなる性質)が減少して、血糖値が上がりにくくなるという相乗効果も得られるようになります。
アディポネクチンを増やす食べ物
糖尿病を予防するには、インスリンの分泌を活性化するのがよいです。インスリンの分泌を促進するホルモンである「アディポネクチン」を体内で増やしてくれる食材を取り入れることで、糖尿病の予防効果が期待できます。アディポネクチンを増やす食材としては、マグネシウム・食物繊維を多く含むものといわれています。海藻類や青魚、大豆などがそれにあたりますので積極的に摂りいれましょう。
いかがでしょうか?毎日の食事で摂取する食材によって、インスリンなどのホルモン分泌にも影響が出てきます。糖尿病リスクを低く抑えるため、食事に気を付けるとともに、ホルモンについての知識も深めて下さい。