糖尿病性網膜症 | 糖尿病の合併症
糖尿病性網膜症について詳しく調べてた結果を紹介しています。
糖尿病の合併症の筆頭に挙がるのが「糖尿病性網膜症」。この病気では、目の網膜には多くの血管が走っていますが、高血糖により損害を受け、血流阻害や出血が起きるようになります。
初期段階にあまり自覚症状がないというのは、糖尿病の合併症によく見られるポイントです。放置すると飛蚊症や視力低下が見られるようになり、最終的には失明に至ります。また「血管新生緑内障」を併発してしまうこともあるので注意が必要です。
糖尿病性網膜症は緑内障と並び、成人の失明原因の上位を占めていますので、くれぐれも注意しなくてはなりません。
どのぐらいの人が失明に至ってしまうのか
糖尿病性網膜症は、50~60代の糖尿病患者の約4割に発症しています。その中でも症状が進行し、視力を失ってしまう人は毎年3,000人もいるという調査結果も出ています。
視力を失ってしまうと、日常生活を送るうえで多くの不便が生じることは、想像に難くありません。また失明までは進まなくても、初期段階を過ぎた糖尿病性網膜症は網膜に大きなダメージを与えるため、罹患前の状態に戻ることは難しくなります。
糖尿病網膜症の3つの種類
糖尿病網膜症は大きく分けて3段階に分けられますが、進行スピードは個人差が大きくなります。血糖コントロールなどに早くから注意をしていた人は比較的進行が遅く、また初期段階であれば改善することが多いです。
それでは、3段階それぞれの特徴をチェックしていきましょう。
1.目に点状やまだら模様の出血が見られる「単純糖尿病網膜症」
糖尿病網膜症の初期段階です。目に針先程度の小さな点々とした出血や、まだら模様のような出血が見られます。
また、毛細血管が膨らむ「毛細血管瘤(もうさいけっかんりゅう)」が見られたり、「硬性白斑(こうせいはくはん)」というシミが確認できることも。このシミは脂肪やタンパク質が沈着してできるものです。
単純糖尿病網膜症の段階ではまだ視力には問題がなく、血糖をコントロールすれば特別な薬を飲んだり手術をしなくても症状が治まっていくことが多いです。
ただし、視力に問題がないからと放置していると症状が進み、手術を行わなければならなくなってしまいます。糖尿病の自覚がある、目に少しでも異変を感じるといった場合は、早めに医師に相談してください。
2.多数のシミや血管の詰まりが起きる「増殖前網膜症」
単純糖尿病網膜症からさらに症状が進んだ段階です。目の中にシミが多数確認できたり、血管が詰まったりしている状態です。
病院で検査すると静脈が膨れ上がり、毛細血管が不規則な形になっていることを確認できます。医師が「蛍光眼底造影検査(※)」を行って状況を確認する場合も。増殖前網膜症の場合も、やはりまだ視力には影響がありません。
しかし、これ以上症状が進むと視力低下のリスクが上がるため、この段階でレーザーによる手術を行うことが推奨されています。
※蛍光眼底造影…特殊な光を当てると蛍光を放つ造影剤を腕の静脈に注射。眼底の血管に流れた造影剤から発せられた蛍光の様子を撮影し、血管の状態を調べる検査のことです。
3.進行すると網膜剥離なども引き起こす「増殖網膜症」
糖尿病網膜症の症状がかなり進んだ状態です。正常ではない新しい血管が伸び、それが破れて出血したり、さらに進行すると増殖膜(網膜の表面にできる異常な膜)や網膜剥離などの症状を併発します。
この新しい血管を「新生血管」と呼びますが、素人の判断では新生血管があるかどうかを見極めることはできず、自覚症状もありません(※注1)。この段階でもまだレーザー治療で回復を目指すことは可能です。
しかし出血、網膜剥離などの症状を引き起こしてしまった場合は、治療が一気に難しくなります。
出血や網膜剥離の症状が出ると視界がぼやけたり、赤く見えるといった自覚症状が出てくるようになります。
このような自覚症状が出てからでは手術を必要とするケースがほとんど。手術が成功しても十分な視力の回復が得られないこともあります。最悪の場合は失明するリスクもあるため十分な注意が必要です。
糖尿病性網膜症で視力を失った人の体験談
私の場合、目の症状が出るまで、自分が糖尿病だということにも気づいていませんでした。視界がぼんやりするという状態が続いた時も、単なる疲れ目かと思っていたんです。
幸い最初に訪れたのが大学病院で、網膜疾患の名医がいました。さまざまな検査の末、糖尿病性網膜症であるとわかったのですが、結果が出たころには症状がかなり進み、眼底出血もありました。手術前は色も形もぼんやりとしかわからず、失明同然でした。
その後もあまり状況は良くならず、再手術まで経験。現在は右眼0.7、左眼0.1の視力に安定していますが「自分の健康を過信しすぎていた…」と反省しています。
糖尿病性網膜症の予防方法
糖尿病性網膜症は、糖尿病の合併症のひとつですが、その詳細は眼科を受診しなければわかりません。内科医に「今のところ大丈夫かもしれないが、念のため眼科を受診するように」と言われても放置してしまう人が多く、症状を悪化させてしまいます。糖尿病と診断された場合は、定期的な眼科受診を欠かさないようにしましょう。
もちろん、糖尿病の本来の治療である血糖コントロールは網膜症の進行抑止に役立ちますので、きちんと実践していきましょう。
糖尿病網膜症の検査方法と治療方法を解説
上述したとおり、糖尿病網膜症は初期の頃に自覚症状がないケースも多いです。糖尿病網膜症による視覚障害のリスクを軽減するには、初期の段階に検査を受けて適切な診断を受けた後、適切な治療を開始することが大切。
もし糖尿病と診断されたら、すぐに眼科などを受診するのはもちろん、その後も定期的に検査を受けることをおすすめします。ここでは、糖尿病網膜症を早期発見するための検査方法と治療方法を紹介します。
糖尿病網膜症の3つの検査方法
糖尿病網膜症の検査は未発症の場合1年に1回行い、所要時間は30~50分程度です。一般的な検査の内訳は以下のとおりです。
視力検査
視力表などを用いて視力の測定を行います。
眼底検査
瞳孔を開く散瞳薬を点眼し、15~30分待ってから眼底検査を行います。眼底カメラなどを使用し、眼の中の状態をチェックして異常がないかどうか確認。
フルオレセインという色素を静脈に注射し、青い光で眼底撮影することで毛細血管を浮かび上がらせる「フルオレセイン蛍光眼底撮影」で検査する方法もあります。
網膜断層検査
眼底に弱い赤外線を当て、反射した波を解析して網膜の断層を描き出す「光干渉断層計(OCT)」を使った検査方法です。
これにより肉眼では確認できない眼底組織の断面の状態を詳しく調べることができ、異常の有無を的確に診断できます。
糖尿病網膜症の治療方法を時期別に紹介
糖尿病網膜症の治療法は、網膜症の度合いによって異なります。
発症前~単純網膜症の時期
初期の頃は血糖コントロールが主で、症状が悪化しないか経過観察を行います。もし毛細血管瘤による限局浮腫などが起こった場合はレーザーを当てて凝固させる治療を行うこともあります。
増殖前網膜症の時期
この時期は増殖前網膜症を食い止めるための重要な時期です。網膜の血管の瘤をレーザー光で焼いて血液成分の漏れを防ぎ、網膜の浮腫(ふしゅ=水が溜まった状態)を引かせます。
増殖網膜症の時期
糖尿病網膜症が悪化すると網膜に新生血管が生成され、網膜静脈がループ状に変化してきます。重症化すると視力の低下が始まるほか、血管新生緑内障や網膜剥離などの合併症を引き起こし、失明のリスクが上昇。
この時期には黄斑部を除いた網膜全体に光凝固を行う「汎網膜光凝固」で治療しますが、硝子体からの出血で十分に凝固できない場合は硝子体を切除する手術を行います。
糖尿病黄斑症の時期
糖尿病黄斑症はすべての時期を通して発症する可能性のある合併症で、初期の頃でも視力の低下が起こります。黄斑部に病変がありますがレーザー光線を当てることができないため、抗血管新生薬(抗VFGF薬)を注射して浮腫を減少させる治療が行われます。