糖尿病改善にも!ユーグレナから「痩せるホルモン」を促進する物質を製造成功
2018年5月21日、産業技術総合研究所の研究グループが、ユーグレナ(ミドリムシ)から「痩せるホルモン」の分泌を促進させる物質を作り出すのに成功したとの発表がありました。ユーグレナとメタボの関係、ユーグレナと糖尿病の関係を紹介します。
ユーグレナとは
ユーグレナとは、ミドリムシの学名であり体の大きさが0.05mmほどの単細胞生物のこと。植物と動物の両方の特徴をもち、ビタミンやミネラルなど59種類の栄養素を含む藻の一種です。
ユーグレナはこのように豊富な栄養素を持つことから、サプリメントや野菜・果物ジュースなどに取り入れられています。さらには、バイオ燃料の製造、医療・環境改善などへも応用されているのです。
ユーグレナがメタボリックシンドローム解消
糖尿病の大きな原因となっているのが、メタボリックシンドロームです。メタボリックシンドロームは糖尿病の前段階とされており、内臓肥満や高血圧・脂質異常・高血糖などの状態のことをいいます。糖尿病を予防するには、このメタボリックシンドロームを解消するのが一番の近道なのです。
ただ、メタボリックシンドロームに対しては食事制限や運動療法が行われていますが、人によって効果が異なることから、効率よく内蔵脂肪を減らせる薬が求められているのです。
そしてユーグレナに含まれる成分が、メタボリックシンドロームに対して有効であるという研究結果が発表されたのです。さらに、その成分を抽出することに成功したという発表があったのです。
ユーグレナについての研究
研究結果
ミドリムシ(EOD-1株)由来の多糖類(パラミロン)から水溶性高分子を作製し、メタボリックシンドロームに関連する指標を改善する作用を示すことを確認した。
パラミロンは水に溶けない多糖類であるが、カチオン性官能基を導入したカチオン化パラミロン誘導体は水溶性となる。今回、高脂肪食肥満モデルマウスにこの誘導体を与えたところ、マウスの内臓脂肪量が減少し、体重増加の抑制作用が確認された。また、インスリン分泌に関与するため糖尿病治療薬開発の重要なターゲットとなっているホルモン(グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1))が、この誘導体を投与しなかった対照群に比べて3倍多く分泌されることが確認された。さらに、インスリン抵抗性が改善された可能性があると考えられた。
上記の内容をまとめると、ユーグレナから取り出したパラミロンという成分は本来水に溶けないのですが、これを水溶性に変える技術を開発に成功しました。この水溶性に変えたパラミロンをメタボマウスに与えたところ、その内蔵脂肪が減少するだけでなく、インスリンを分泌するホルモンであるGLP-1の分泌を増やしたということです。
GLP-1はインスリン分泌を促進するホルモンのひとつであり、糖尿病治療薬への利用が期待されている成分です。今回の研究により、ユーグレナに含まれる成分が内蔵脂肪を減らしメタボリックシンドロームを解消したり、糖尿病に良い影響を与える可能性があるとわかったのです。
この研究が、糖尿病治療薬やメタボリックシンドロームの治療薬の開発への足がかりとなる可能性があります。
今後の予定
研究グループによると、今後はパラミロン誘導体によるホルモン「GLP-1」分泌促進のメカニズムの解明と、パラミロンの構造の最適化のために、大学などの研究機関や製薬企業などの新たな研究開発体制の構築に取り組む、とのことです。