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オステオカルシン | 糖尿病を予防する体内ホルモン

このページでは、糖尿病治療の現場で注目されているホルモン「オステオカルシン」について、上野医師に解説していただきました。

監修医師情報

上野内科・糖尿病内科クリニック

院長 上野尚彦医師

糖尿病治療において注目されているホルモン、オステオカルシンとは

オステオカルシン 糖尿病

近年、注目を集めている「オステオカルシン」は、骨から分泌されるホルモンです。この「オステオカルシン」は、骨芽細胞から分泌され、骨中にわずか0.4%という割合で存在します。そして、さらに微量が血中を循環しています。

微量でもその働きには侮れないものがあり、多くの実験の結果、以下のような効果が報告されています。

  • 脳の神経細胞死を抑制する効果があるらしい。
  • 筋繊維を増やすたんぱく質合成能力向上に効果がある。
  • 男性ホルモンのテストステロンを増やす働きがあり、男性の生殖機能を回復させる可能性がある。

オステオカルシンが糖尿病を予防する仕組み

オステオカルシン 糖尿病

そんなオステオカルシンですが、糖尿病治療の現場でも大いに注目されています。

東北大学大学院医工学研究科では、オステオカルシンが血糖値を下げるインスリンの分泌を増加させることが明らかになりました(※注1)。

どういうことかというと、オステオカルシンは、すい臓でランゲルハンス島ベータ細胞を増殖させ、インスリンの分泌量を増加させるということです。

インスリンをパワーアップする

また、小腸でインスリン分泌を促すホルモンであるインクレチンの分泌量を増やすということもわかりました。つまり、オステオカルシンはインスリンの分泌を増加させる効果があるのです。

また、九州大学の研究では、マウスを使った実験において、オステオカルシンを経口投与し続けた際に、インスリンの分泌量が増えていたというデータがあります(※注2)。

オステオカルシンを飲み続けたマウスのすい臓では、インスリンを合成・分泌するランゲルハンス島のベータ細胞が増殖し、ランゲルハンス島が増大していることがわかった。それに伴ってインスリンの分泌量も増えていた。

引用:『骨が作るタンパク質が血糖値を下げる オステオカルシンが代謝を改善|糖尿病ネットワーク』

そして、インスリンの分泌が増加することは、血中の糖の量、つまり血糖値を減らすことになります。オステオカルシンを増やすことで、糖尿病を予防することができるのです。

ちなみに、オステオカルシンの濃度が低い人は、糖尿病診断の指標として用いられているHbA1cが、高いケースが多いこともわかっているそうです。

オステオカルシンを増やす2つの方法

オステオカルシンを作るのは骨芽細胞です。この骨芽細胞を活性化させれば、オステオカルシンも増える可能性が高まります。

1.納豆・ほうれん草などで積極的にビタミンKを摂取

オステオカルシンを作るために必要になるのが、ビタミンK。オステオカルシンはビタミンK依存性のカルシウム結合蛋白で、ビタミンKの作用によって骨芽細胞から生成されます。

ビタミンKが足りないと、「低カルボキシル化オステオカルシン」が作り出されます。このホルモンは、骨の中に吸収されず血中に放出されるため、正常に機能しません(※注3)。

ビタミンKを多く含む食品は、納豆や小松菜、ほうれん草など。積極的に食べて、ビタミンK不足にならないように心がけましょう。

2.運動で骨密度の上昇をサポート

骨は皮膚などと同様に、新陳代謝を繰り返しています。そして、新しい骨を作る際に必要なのが骨芽細胞です。骨の新陳代謝がうまく進まなくなると、骨粗鬆症など骨が軽くなってしまう症状が現れます。

オステオカルシンは、骨芽細胞が活性化すると増えることが多いため、骨密度対策の治療や運動をすればオステオカルシンを増やせる可能性があります。

骨粗鬆症予防には、運動が効果的だとされています。さらに骨に衝撃を与えることで、骨密度を増加させることができます。

「(旧版)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」によると、35歳から45歳の閉経後女性を対象にした跳躍運動の結果、下肢の骨密度の増加が認められたそうです(※注4)。

跳躍運動とは、要はジャンプのこと。関節や骨を痛めない程度に軽いジャンプを毎日繰り返すといいでしょう。

サプリでオステオカルシンを摂取できるようになる可能性も?

九州大学が行ったマウスによる実験では、経口投与したオステオカルシンによって、少なくとも24時間は血中濃度の高い状態が続いたそうです。

また血中のオステオカルシン濃度が高くなったことによって、血中GLP-1濃度も上昇したという結果がでています(※注5)。GLP-1とは、インスリンの分泌を促し、血糖値を低下させる作用のあるホルモンのことです。

2018年6月現在では、まだサプリメントは販売されていませんが、そのうち経口摂取で効率的にオステオカルシンを増やすことが可能になるかもしれません。

オステオカルシンとアディポネクチン

いかがでしょうか?今後オステオカルシンについての研究が、ますます進むことに期待したいものです。さらにもう一つ、糖尿病患者やその予防に努めている人を驚かせるオステオカルシンの働きがあります。

それは脂肪細胞から分泌されるホルモン「アディポネクチン」の分泌を促進させること。アディポネクチンは「奇跡のホルモン」と呼ばれ、糖尿病予防効果が期待され、近年の糖尿病治療の現場で注目を集めています。

今後このふたつのホルモンの相乗効果で、血糖値コントロール法は新たな展開を迎えるかもしれません。

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