女性と糖尿病
ここでは、糖尿病と女性の関係を調べています。糖尿病といえば男性がなる病気というイメージが強いかもしれませんが、本当はどうなのでしょうか。
女性の糖尿病事情
引用元:40歳代から急速に増える糖尿病 【国民健康・栄養調査2】|糖尿病ネットワーク(http://www.dm-net.co.jp/calendar/2011/016459.php)
女性だからといって、糖尿病の罹患率が低いということはありません。統計では女性10~11人に1人の割合で、糖尿病が発症していますので要注意。上のグラフにある通り、特に40歳以上になると糖尿病が疑われる人は急激に増えます。
また、妊娠中のホルモンバランスの乱れを機に発症する「妊娠糖尿病」は、女性ならではの糖尿病。インスリンの働きが低下して食後血糖値が上昇しやすい状態になってしまいます。ちなみに、非常に紛らわしい名称ですが、妊娠糖尿病とは厳密な意味での糖尿病ではなく、糖尿病に至っていない糖代謝異常の状態です。出産を機に症状は落ち着くことがほとんどですが、中には治癒しないで通常の糖尿病になってしまう人もいるので要注意です。
妊娠糖尿病のリスク
妊娠糖尿病になると、母体にも赤ちゃんにも悪影響を及ぼす可能性があります。たとえば、流産や早産、帝王切開となる可能性、感染症、新生児低血糖、子宮内胎児死亡といった合併症のリスクが上昇することがあるのです。
女性が糖尿病になると現れる3つの初期症状
糖尿病の初期症状としては、トイレの回数や喉の渇きなどが挙げられます。しかし、これらの初期症状は、単なる疲れが原因ではないかとあまり深刻に捉えないこともあり、糖尿病の症状であるとは気がつきにくいものです。
ただ、女性たちには、女性ならではの糖尿病初期症状が表れることがあります。たとえば、以下の3つのような症状に当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。
症状1.デリケートゾーンのかゆみ
女性の糖尿病初期症状の一つとして、デリケートゾーンのかゆみが挙げられます。なぜなら、尿と一緒に排出された過剰な糖分が陰部に残ることで、それが雑菌の餌となり、結果かゆみが発生してしまうことがあるためです。「入浴時にきちんと洗っているのに、かゆい」という悩みがある人は、一度糖尿病を疑ってみるべきかもしれません。
症状2.痛みを伴う足の冷え
糖尿病の初期症状として、足にしびれや痛みなどが出る糖尿病性神経障害は有名ですが、痛みを伴う「足の冷え」が生じることもあるようです。もともと女性は、男性よりも筋肉量が少ないため冷え性になりやすいのですが、糖尿病になるとより足が冷えやすくなったり、悪化しやすくなったりするといわれています。
痛みが伴うような冷えは、単なる冷え性ではなく、糖尿病の初期症状かもしれません。昔から手足が冷えやすいからと大したことないと、症状を見逃してしまわないよう気をつけたいところです。
症状3.月経の異常
東京女子医科大学 糖尿病センターによると、10代・20代の糖尿病の女性は無月経や月経不順といった月経異常に悩んでいるケースが多いといいます(※注1)。
月経異常を引き起こす理由について詳しいことはわかっていませんが、生理と糖尿病は無関係と決めることはできません。以下で、その関係についてみていきましょう。
生理と糖尿病
糖尿病とは、血糖値を下げる働きを持つ「インスリン」がうまく働かなくなることで、血糖値の高い状態が続くことをいいます。この血糖値は月経によって変動することがあるのです。
それには、インスリンが「エストロゲン(卵胞ホルモン)」や「プロゲステロン(黄体ホルモン)」に影響を受けることが関係すると考えられています。これらは、月経周期の中で分泌量が変化する女性ホルモンです。
エストロゲンには、インスリン感受性を高め血糖値を下げやすくする働きがあります。一方、プロゲステロンはインスリン感受性を低下させて血糖値を上げやすくします。つまり、これらによって血糖値のコントロールがしにくくなるといえるでしょう。
ただし、糖尿病になると必ず生理に問題が起きるというわけではありませんし、生理が乱れる原因は他にも様々にあります。しかし、「今月は生理がきていない」というとき、糖尿病が関係している可能性もあることを覚えておくとよいでしょう。
女性ホルモンと糖尿病の関係
人間の性別とその機能を決定づけるのに役立っているのが性ホルモンです。男性にも女性ホルモンの分泌はありますが、その量は女性に比べ10分の1程度です。女性ホルモンは、女性らしい身体的な特徴を形作ったり、妊娠など女性ならではの性機能を順調に働かせるために役立っているのです。
女性ホルモンの中にも、糖尿病の予防に影響を及ぼすものがあります。それがエストロゲンです。エストロゲンはインスリン感受性を上昇させたり、内臓脂肪を代謝させる力があり、肥満を防止します。
このように、女性ホルモンには、糖尿病リスクを排除するパワーが秘められています。それだけにバランスが乱れたり、働きが衰えてしまうとリスクが一気に高まる心配もあるので注意が必要です。
50歳以上の女性は特に注意が必要
更年期に差し掛かった女性は、糖尿病リスクに敏感になる必要があります。というのも、更年期とは女性ホルモンの働きが弱まる時期だからです。上記のように、女性ホルモンの代表格であるエストロゲンには、インスリン感受性を高める機能があります。しかし、更年期でエストロゲンの分泌が減少すると、インスリンの分泌にも悪影響が及んでしまうのです。
また、更年期は代謝も落ちやすくなっている時期なので、油断するとすぐに太ってしまいます。インスリンを分泌するすい臓に、肥満が大きな負担をかけるのは周知の事実。美容面だけでなく、健康面でも注意が必要です。
性障害の懸念もある
女性の糖尿病患者を対象とした調査で、性欲の低下などの性障害が少なくない割合で確認されたというものがあります。少人数を対象にした調査であるため、断定的なことはいえませんが、注目しておきたいデータです。(※注3)
糖尿病の男女間での比較
男性でも女性でも発症する人が少なくない糖尿病ですが、男女での違いについて見ておきましょう。
男性には起こり得ない妊娠糖尿病があることから、女性の方が糖尿病になりやすいかといえば、そういうことはありません。2型糖尿病は女性のほうが少ない傾向にあり、1型糖尿病では若干女児が多い傾向にあるようです。
2型糖尿病は女性に少ない
2型糖尿病は、遺伝や生活習慣の問題によってインスリンの量や働きが低下して起こる糖尿病です。一般に、日本で成人の糖尿病という場合は、この2型糖尿病がほとんどを占めています。厚生労働省の調査結果によると、2型糖尿病は、男性に比べて女性には少ないとされています。
2型糖尿病では肥満体型の人が多いとされています。女性患者の方が少ない理由としては、肥満体型の人は男性のほうが多い傾向にあることが考えられます。また、女性はインスリン感受性が男性よりも高い点も指摘されている要因のひとつです。
1型糖尿病では若干女児が多い
一方、若い世代に多いとされるのが1型糖尿病です。1型糖尿病では、男児よりも女児の方が発病率において若干多いとされています。1型糖尿病は、β細胞が壊れてしまうことにより、すい臓のインスリン分泌が極めて少なくなることによって起きる糖尿病です。