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運動のタイミングや生活意識で変わる!血糖値を下げる運動のポイント

糖尿病の予防として、まずは血糖値が高い状態を防ぐ、血糖値を下げることがポイントです。運動をすることは、短期的な効果として筋肉が血中のブドウ糖をエネルギーとして消費し、血糖値を下げることができます。長期的な効果としても、インスリンが効きやすくなり、血糖値の上昇を防ぐことができるようになります。これまでは、一定時間以上の有酸素運動が効果的と言われてきましたが、最新の研究では短時間の運動や、日常生活の活動量アップも血糖値を下げ、糖尿病予防に効果的であるという報告がされています。

食後の積極的な歩行で血糖値を下げる

ニュージランドのオタゴ大学の研究によると、食後に10分間の歩行をするほうが1日30分の歩行をするよりも2型糖尿病患者の食後高血糖予防に効果があるという報告がされました。この研究では、41名の2型糖尿病患者に対して1日30分の歩行と毎食後10分間の歩行をそれぞれ2週間行い、活動量と5分間ごとの血糖値を測定しています。その結果1日30分時間を決めずに歩行を行う場合に比べて、食後10分間の歩行の方が、食後血糖は平均12%低下、また夕食後の食後血糖値に関しては22%の低下がみられました。

また、立命館大学の調査によると、食後15分後に15分間の少し早めの歩行を取り入れると、食後血糖の上昇をもっとも効果的に抑えることができることも報告されています。

これらの研究から、1日の中でまとまって歩行や運動を取り入れる事が難しくても、食後に10~15分間程度、積極的にウォーキングをすることで食後の血糖値上昇を抑えることができ、糖尿病予防にも効果があることがわかりました。

日常生活の活動量を増やす

これまで効果的な運動として20分以上の持続的な運動が推奨されてきましたが、最近の研究では短時間の運動を繰り返した、細切れの運動であっても1日の総運動時間が同じであれば、同様の血糖降下作用があることがわかっています。

健康な成人を対象に、9時間のデスクワーク中、1日1回30分の歩行をした場合と、30分ごとに1分40秒間の歩行をした場合との血糖値とインスリン値の違いを検討した結果、30分ごとに1分40秒間歩行をした場合の方が、曲線下面積が血糖値では37%、インスリン値は18%の減少が報告されています。(Peddie MC, Bone JL, et al.: Breaking prolonged sitting reduces postprandial glycemia in healthy, normal-weight adults: a randomized crossover trial. Am JClin Nutr.2013;98: 358-366)

また、2型糖尿病患者が1回あたり3分間の階段昇降を食後60分および120分の2回行うだけでも食後の血糖値は優位に低下したことも報告されています。3分間という短時間であっても、階段昇降を2回行うだけで血糖コントロールに効果があるということです。

つまり、座る時間を減らして立つようにすることや、階段を積極的に使うこと、短時間でも歩いて移動を増やすといった、短時間であっても活動量を増やすことで血糖値を下げる効果を得られます。

筋トレと有酸素運動を両方行う

糖尿病予防や改善のための運動療法として、有酸素運動に加えて筋力トレーニングも効果があることがわかっています。

筋力トレーニングによって筋肉を使うことで、血中のブドウ糖を筋肉が消費するため短期的に血糖降下作用があります。加えて、トレーニングの継続で筋量が増加することで、筋肉の消費エネルギーもアップし血糖コントロールの改善やインスリン感受性が上がります。筋力トレーニングを行うだけでも、有酸素運動と同様の効果が得られることもわかっています。

有酸素運動と筋トレを比較すると、インスリン抵抗性の改善やインスリン感受性の向上、脂肪燃焼などの相対的な観点で、有酸素運動の方が効果は高いと言われています。しかし、最近の研究では、有酸素運動と筋トレの併用がもっとも効果があるという報告がされています。

アメリカの研究で、2型糖尿病患者262人を、「有酸素運動のみ」、「筋トレ(週3回)」、「有酸素運動と筋トレの併用(週2回)」、「運動なし」の4つのグループに分け、運動をする3つのグループは週150分程度の運動となるようにし、血糖値指標のHbA1c(ヘモグロビンA1c)の変化を約9カ月にわたって追跡しました。その結果、HbA1cの値は「有酸素運動と筋トレの併用」が最も低下し、次いで「有酸素運動のみ」、「筋トレのみ」となりました。また、「有酸素運動と筋トレの併用」グループのみが統計的に見ても有意な差を示しています。

長期的な血糖値を下げる効果として、有酸素運動と筋トレの併用がもっとも効果的であるといえます。

まずはできる運動と小さな習慣から始める

平成29年度の厚生労働省による「国民健康・栄養調査」の報告では、運動習慣のある人の割合は、男性で35.9%、女性で28.6%と言う結果になっており、この10年でこの数字は大きく変わっていません。この背景には、運動をする時間が取れないことが理由として多く挙げられています。

運動習慣と聞くと身構えてしまう人も多いですが、近年の研究からまずは小さな習慣と意識づけによって、糖尿病は予防できることがわかってきています。血糖値を下げるための運動として、まずは日常生活の中での活動量を上げることを意識してみましょう。食後10分の速足歩行、階段を選んで使う、2分程度の休憩時間も立って歩くだけでも、血糖値を下げて糖尿病を予防する効果があります。生活に取り入れる小さな習慣と意識が、糖尿病予防になります。

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