糖尿病予防に効果的な運動のタイミング
運動はいつ行ったとしても、血糖コントロールの改善や内臓脂肪の減少に効果があり、糖尿病予防になりますが、タイミングよく運動をすることでより効果的に糖尿病を予防することができます。
糖尿病のリスク食後高血糖
健康な人の血糖値の変化は、食事をとってから、1時間程度でやや上昇し、その後おだやかに下降します。糖尿病患者の場合は空腹時、食後ともに血糖値が高い状態となり、この高血糖状態が様々な疾患のリスクとなり合併症を引き起こします。
また、糖尿病初期の状態として、空腹時血糖は健康な人と変わらないものの、食後の血糖値が糖尿病患者と同じレベルまで上がる「食後高血糖」があります。この食後高血糖をそのままにしていると、やがて糖尿病へと進行していくため、食後高血糖の改善が糖尿病の予防に重要です。
食後の運動が高血糖予防に効果的
糖尿病予防に効果的な運動は、この食後高血糖を防ぐことがポイントです。食事前後の運動と血糖値の変化に関する研究によって、食後の血糖値の上昇を抑えるためには食後の運動が効果的であることがわかっています。
2016年に発表されたニュージランドのオタゴ大学の研究報告によると、食後に10分間のウォーキングをすることは、1日30分のウォーキングをするよりも食後の高血糖の改善に効果があることがわかっています。また、研究対象者の多くは夕食に炭水化物を最も多く摂取しており、夕食後のウォーキングの効果が最も大きかったことも報告しています。この結果から、ウォーキングを食後に行うことが食後の血糖値上昇を防ぐことに効果があり、特に炭水化物を多く摂取した後は、より効果的に血糖値の上昇を防ぐことがわかっています。(※注1)
食後に10分間ウォーキング程度の運動を積極的に取り入れる。また、炭水化物の多い食事をとった後は特に意識してウォーキングをすることで、食後の血糖値上昇を抑えることができます。
筋トレも食後が効果的
ミズリー大学の研究では、肥満のある2型糖尿病患者13人を対象に運動を全くしない日、夕食前筋力トレーニング45分、夕食後筋力トレーニング45分の3つの条件で運動を行い血糖値と中性脂肪の変化を観察しました。その結果、運動を全くしなかった場合に比べ、食前運動は18%、食後運動は30%、食後の血糖値上昇を抑えることが出来たと報告しています。また、中性脂肪の値に関しても、食後の運動は食前や全くしなかった場合に比べて上昇を抑えることができることがわかりました。(※注2)
食後の筋トレによって、ブドウ糖と脂肪酸がエネルギーとして消費され、上昇を防ぐことができるといえます。食後の筋トレ運動は、血糖値だけでなく中性脂肪にも効果があり、糖尿病と血管疾患の予防にも効果があります。ただし、この効果が持続するのはその日のみであり、翌日運動をしなければ血糖値も中性脂肪も元通りになることがわかっています。食後の運動を毎日継続することが糖尿病予防には大切です。
食後の運動を毎日続けて糖尿病を予防
運動による短期的な効果によって、食後に運動を行うことで効果的に血糖値の上昇を防ぐことができます。また、運動を続けることで筋肉の量が増え、インスリンの感受性(筋肉がブドウ糖を取り込む働き)とインスリン抵抗性(インスリンの働きの低下)が改善され、血糖コントロールが良くなるという長期的な効果も得ることができます。タイミングのよい効果的な運動を継続して、糖尿病を予防しましょう。