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肥満や糖尿病になると骨格筋が減少するメカニズム

肥満体型

肥満や糖尿病の患者において骨格筋が減少するメカニズムが、京都医療センターをはじめとする研究チームによって世界ではじめて解明されました。詳しく見ていきましょう。

高インスリン血症は骨格筋を減少させるマイオスタチンの増加を招く

骨格筋とは、人間が日々の生活や運動を行うにあたり、最も重要となる器官のひとつです。一般的に「筋肉」としてイメージされるものが骨格筋にあたります。

肥満や2型糖尿病の人はインスリンが過剰分泌される「高インスリン血症」になりやすく、血中インスリン値が上昇しやすくなります。

今回の研究では、血液中のインスリン量が多いほど、骨格筋を減少する作用をもつ分子である「マイオスタチン」の量も増えることがわかりました。

つまり、「高インスリン血症によるマイオスタチンの増加が、骨格筋の減少につながっている」ということなのです。

マイオスタチンの役割

マイオスタチンは、主に骨格筋でつくられる分子です。通常は、骨格筋が増え過ぎないように調節する働きをしており、身体活動において良好なバランスを維持する役割を持っています。

高インスリン血症の原因は「肥満によるインスリン抵抗性」

通常よりも体重が多く、BMIや脂肪率が高い人や2型糖尿病の人はなぜ「高インスリン血症」になりやすのでしょうか?その原因のひとつは「肥満」という症状にあるといわれています。

インスリンは、骨格筋をはじめとする筋肉に作用して、細胞に糖の取り込みを促す役割を持っています。この働きによって、血糖値は正常に保たれているのです。しかし、肥満などが原因でこうしたインスリンの作用が効きにくくなり、糖が細胞に十分に取り込まれなくなることがあります。この状態のことを「インスリン抵抗性」といいます。

すると、今度はその状態を補うために、多量にインスリンが分泌されることに。これが「高インスリン血症」を招くといわれています。

肥満患者はインスリンが増えるほどマイオスタチンも増加

研究チームは、血液中のインスリン量と、血液中のマイオスタチンの関連性を研究しました。その結果、肥満患者の場合、インスリン量が多くなるほどマイオスタチンも多くなることが証明されたのです。

肥満の病状が進行すると、インスリン抵抗性が発生。そして高インスリン血症になると、骨格筋を減らしてしまう「マイオスタチン」の量が増えていくというメカニズムです。

肥満の人は骨格筋が減るリスクが高い

肥満の人と非肥満の人を比べた場合では、同じ骨格筋の量であっても、肥満の人の方が、骨格筋の量が減少するリスクが上がるとされています。

これは、肥満によってインスリンの働きが悪くなっている状態でいると「マイオスタチン」の量も増えてしまうからなのです。

肥満を解消することで合併症の予防にもなる

今回の研究結果から、肥満が骨格筋の減少にダイレクトに関わっていることがわかりました。

肥満が進行すると、インスリンの増量とともに、マイオスタチンも増加。その結果、骨格筋が減少します。このサイクルが続いてしまうと、骨格筋の現象によって、運動能力の低下や代謝の悪化につながっていきます。さらには、生活習慣病や合併症を引き起こすことになりかねないのです。

このような事態を防ぐには、まずは肥満の解消を優先して実行しなければなりません。

運動するときはまず医師に相談を!

糖尿病患者さんのなかには、運動を禁止しなければいけない場合や、制限しなければならない場合があります。無理をすれば病状が悪化するおそれも。運動を始めたい場合は、まずは医師に相談したうえで行うようにしましょう

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